13歳からのアート思考

「自分なりのものの見方」を知り、「自分だけの答え」を見つけることができる。

13歳からのアート思考本文より抜粋

さあ!大人でも楽しめる美術の授業をはじめよう!

「絵を描くのも下手だし授業が苦だった」

「テストのために作品名や作者の歴史を覚えるだけだった」

「正直、アート作品を見てもよくわからない」

という方でも美術・アートについての考え方を変えてくれるのがこの本だ。私もそのうちの一人である。

この授業を受けることで、”美術=何かを作ること”ではなく、”美術=思考を広げること”であるということに気づかされる。当たり前に思えていた世界がセクションを重ねていく度にぶっ壊されていくことにワクワクが止まらなかった。この授業を義務教育で受けたかった…とも思うが、大人になった今でも楽しむことができ、むしろ大人になった今だからこそ体験すべき授業だと思う。

この本は6つの授業で構成されており、絵画がピークであるルネサンス期から現代の作品へと触れていく。「結局、美術の歴史を学ぶだけじゃん」と思う人もいるかもしれないが、どうか立ち止まらず騙されたと思って読み進めてほしい。

ここでは、

自分のものの見方を知るために、必要な材料として美術作品に触れられている

だけなのだ。

ルネサンス期は見えたものをよりリアルに表現できるものが素晴らしい作品とされてきた。しかし、カメラの登場によってその常識が覆る。アーティストたちは、「アートってなんだ?どうあるべきなんだ?」という疑問が生じ、それの答えを見つけるべく自分たちなりに探究していく。そしてその探究の先にたどり着いたものこそが彼ら自身の答えであり今も尚残る作品となっている。読者はそういった作品を鑑賞し体験しながら自分のものの見方を知り、「自分だけの答え」を見つけることができる。

印象に残っている体験は、「5秒窓をみたあとに5秒床を見てください」というものである。

実際に自分の部屋の窓を見た後に床を見た。そして、「窓を見てください」と「床を見てください」と言われたときにそれぞれ何が見えたか問いかけられると、前者は「他の家の屋根と青い空と白い雲」という答えが出て後者は「フローリングの木の木目がグルグル丸くなっている」という答えが出た。

この問いかけに対する解説を読んだとき、思わず椅子から滑り落ちそうになった。著者は私の答えを見透かしていたかのように、「窓を見てください」と言われて多くの人は”窓そのもの”ではなく”窓の外”を見たのではないかと述べている。その言葉にハッとさせられた。何を隠そう、私は窓本体ではなく窓の外に映る景色を見ていた。さらに、「床を見てください」と言われると床の質感や髪の毛、ほこりが落ちているというように物質に目を向けるだろうと述べている。そう、私は木の木目に注目していた。

このように、窓を見ることは絵画を観ることと似ており、「絵画を観てください」と言われたら額縁に囲まれた”イメージ”に目を向ける。しかし、ボロークというアーティストは”絵画=イメージを映し出すもの”ではなく”絵画という物質そのもの”に目を向けさせようとしたようだ、と著者は述べている。

当たり前のことを当たり前としてとらえない。別の視点から見つめる。

そういったエッセンスが多く盛り込まれているので、どんどん読み進めていきたくなる。そして、読後は世界に対する見つめ方が変化し、何より美術館で鑑賞したくなる!そんな体験を多くの人にしていただきたい。

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